第一回

冷え、むくみ、不眠 etc…
―身体の不調は「深部体温」がカギ―

前編:健康をつかさどる「深部体温」を上げる

私たちの身体にとって、「体温」は生命を維持するために欠かせないものです。

体温は、身体の中で起きている代謝の過程で発生する熱と、身体の外に逃げていく熱とのバランスで一定に保たれていますが、ひとつの身体でも、検温する部位や環境によって、体温に違いがあることをご存知ですか?

普段、ワキの下で測る普通体温計は、身体の表面の温度(皮膚温)を測っています。舌下で測る婦人用体温計は、月経周期の体温変化を微差0.01単位まで測れますが、普通体温計や婦人用体温計による検温は、唾液や汗、室温など周辺の影響を受けやすいものです。つまり、一般的な体温計の数値はあくまで目安としてのものなので、医療機関では検温を複数回行うことがよくあります。

周囲の環境から直接影響を受けない、身体の中心部の体温のことを、「深部体温」といいます。これは直腸や血液などで測るため、専門機関でなければ測れません。

深部体温は、脳や臓器が効率よく活動するために必要な熱です。そのため、深部体温を上げて臓器を温めるということは、全身の健康を保つうえでもっとも重要です。

近年の温活ブームに限らず、身体(臓器)を温める習慣は、古来日本人の暮らしにあると思います。たとえば身体を中から温めてくれるショウガやネギは和食には欠かせない食材ですし、日本人は神州清潔の民(神の国日本の清潔を重んじる民)として、昔から入浴習慣などを重んじてきました。海外からも風呂好き民族として知られていますね。

医療においても深部体温はキーポイント

現代においても、約40年前から高度先進医療に認められている「ハイパーサーミア」という温熱療法は、ずばり「温浴」です。これは“がん細胞は熱に弱い”という原理をもとに考案された治療法で、湯船に入って水温を上げながら、直腸で深部体温の上昇を検証します。すると、体調の良い人ほど深部体温の上昇が早く、不調な人ほど遅いーーもちろん代謝の差はあるものの、深部体温が早く上がるということは、臓器がきちんと機能している、適正な深部体温を保っているということになります。

深部体温を上げるために普段からできることは、温浴・・つまりお風呂に入ることです。サウナも温浴ですが、深部体温を上げるうえで覚えておきたいのは、深部体温の上昇が、湯船やサウナで「熱い」と感じる感覚や、汗の量だけでは判断できないということです。

身体の外からの温熱に対する反応には「ヒートショックプロテイン」という、熱の刺激で誘導されるたんぱく質が関係しており、個人差があります。汗をかくのは、皮膚温の温度調節をするための汗腺のはたらきです。汗をかいたからといって、身体の中心部の深部体温が上がっているとは限らないのです。

冷え性の人は、冷えを感じている時は深部体温も下がっていると考えて良いでしょう。深部体温が35℃以下と定義されている「低体温症」は、日常生活でも起こり得ます。たとえば、夏はエアコン温度を26〜28℃に設定している室内が多いと思います。その室内で過ごすうちに身体は室内温度に順応し、深部体温が35℃よりも低い体温になる。そのため、現代の生活様式では、気づかないうちに低体温症になっている人も多いのではないでしょうか。

深部体温が下がると血のめぐりが悪くなるので、低体温症の症状として、まず足がむくみます。冷えることで血管が収縮して血管が細くなり、デスクワークで身体を動かさないと血のめぐりも悪くなるからです。身体を動かしたり温めれば溜まっていた血液やリンパ液がめぐってむくみは取れますが、足のむくみは「自分の深部体温が下がっている」と気づくきっかけになります。

また、深部体温が35℃以下になると、腸の蠕動(ぜんどう)運動が止まります。腸は深部体温が適正なら活発に機能するし、深部体温が低いと活動しなくなるというわかりやすい臓器です。腸を温めてきちんと機能させなければ、口から摂り入れた食べ物の栄養や薬の効果が身体の隅々まで行き渡りません。ちなみに、冷たい食べ物も深部体温を下げます。世界三大伝統医学である東洋医学やアーユルヴェーダにおいても、季節を問わず冷たい食べ物を食べないよう推奨しています。

深部体温を上げる習慣を

現代の日本人の入浴は、欧米の影響と日々の忙しさで「シャワーだけ」が主流になりつつありますが、日常生活に深部体温を上げる習慣を取り入れるなら、このシャワー習慣を改めるべきです。シャワーで熱いお湯を浴びたとしても一時的に身体の表面が温まるだけなので、深部体温が上がるまでには至りません。高温の蒸気に包まれるサウナも、長時間入り続けられる猛者でなければ、体感する熱さや呼吸から入る熱気に負けて短時間で出てしまうのではないでしょうか。

その点、nifuの発酵温浴のように、おがくずに15分身を委ねるだけで身体が芯から温まるという温浴は、深部体温を意識した生活習慣に取り入れやすいと思います。nifuでは自然の発酵熱で70〜80℃まで熱くなったおがくずを、お客さんの希望に合わせて体感温度40度前後に調整しています。ラクな姿勢でヒノキの香りに癒されながら、わずかな時間で身体の芯から温まっていることを実感できるのなら魅力的な温浴ですね。サロンに通うという特別感は美意識も高めてくれます。(後編に続く)

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