前編でご紹介したように、乳酸菌が作用するフローラは、口腔や皮膚など身体の様々な場所にもあります。私の専門でいうなら、オーラル(口腔)フローラです。たとえば、口臭予防に強力なマウスウォッシュを多用する人もいますが、殺菌効果が高いと、オーラルフローラにいる悪玉菌だけでなく、善玉菌や日和見菌も死滅します。しかし悪玉菌ほど生き延びやすく、結果的に歯周病や虫歯のリスクを高めることもあります。
また、朝起きた時に口の中がネバついたり、風邪を引いた時の口角炎は、悪玉菌であるカンジダ菌の増殖に起因することがよくあります。カンジダ菌は出産時の産道感染で誰もが持っている常在菌です。ヒトの唾液中には、悪玉菌の増殖を抑える免疫物質が色々ありますが、ドライマウスや風邪などで体力が落ちた時、また、ストレスや服用中の薬の内容でも唾液が減り、カンジダ菌が増えてしまいます。
そんな時に乳酸菌EF-2001のサプリメントを摂ると、多くの人が回復します。この乳酸菌が口腔フローラの適正化に作用したといえます。
このような乳酸菌のサプリメントは、食物繊維やオリゴ糖も入っている製品がおすすめです。なせなら、これは「シンバイオティクス」というアプローチに基づいているからです。
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、「プロバイオティクス」と呼びます。そして、このプロバイオティクスを作用させるための食物繊維やオリゴ糖を「プレバイオティクス」と呼びます。シンバイオティクスとは、このふたつを摂るアプローチで乳酸や短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)が産生されるという考え方です。
今注目のアプローチ、実は日本古来の食習慣
主に小腸に住みつく乳酸菌は、食物繊維やオリゴ糖をエサに乳酸を産出し、食べ物の消化吸収を助けたり、悪い菌の増殖を抑えてくれます。主に大腸に住みつくビフィズス菌は、食物繊維やオリゴ糖をエサに乳酸と短鎖脂肪酸を産生し、ミネラルの吸収を促進したり、免疫力を高めてくれます。シンバイオティクスは今一番新しい考え方ですが、一般の方には馴染みのない用語だと思うので、これを日常の食事に置き換えてみましょう。
たとえば私は、毎日の朝食に、納豆とワカメを食べるようにしています。その納豆には乳酸菌が豊富で、ワカメには食物繊維が豊富です。不溶性食物繊維の多い野菜よりも、ワカメなど海藻に含まれる水溶性食物繊維の方が効率的だと思います。この食べ合わせで、理論的には、体の中で乳酸や短鎖脂肪酸が産生されていることになります。とくに短鎖脂肪酸は、ミネラルの吸収や免疫力に作用する以外にも、大腸や肝臓などのエネルギー源であったり、腸内の悪玉菌増殖の抑制、脂肪の蓄積抑制作用など、身体にとって非常に有効な有機酸です。
このような発酵食品と海藻の食べ合わせに関しては、トップジャーナルにも多くの論文が掲載されていますが、これは日本人が昔から食べているものですよね。山海に囲まれた日本で図らずも叶えてきた、伝統的な腸活ともいえます。食生活の乱れをサプリメントなどで補う場合も、乳酸菌だけでなく、その作用の素地となる食物繊維やオリゴ糖を一緒に摂ることを忘れずに。乳酸菌の“エサ”が無ければ、せっかく摂ってもほとんど作用せず身体から出てしまいます。
皮膚フローラの適正化も乳酸菌に期待
女性の関心が高いスキンケアにも乳酸菌由来の製品が多々ありますが、なかでも乳酸菌飲料で名高い大手メーカーの製品は、その背景にある膨大な研究データからエビデンスを導き出して製品化しているようです。乳酸菌を扱う多くの企業は独自に見出した乳酸菌を保有しているので、長年の研究で、より多くの人の皮膚フローラ適正化に作用する乳酸菌を見出したのでしょう。
nifuが発酵温浴に使用するヒノキのおがくずにも乳酸菌が存在することが証明[i]されていますが、自社伐採の生ヒノキを使い自然の発酵熱だけで温めていること、また、頻繁におがくずを入れ替える徹底した衛生管理を考慮すると、これも皮膚フローラに良い環境なのではないかと思います。発酵温浴で深部体温を上げ、発汗で代謝を促しながら皮膚フローラを整えるというメンテナンスは、魅力的なスキンケアですね。
[i] おがくず素材について次世代シーケンサーによる細菌叢解析を実施